古典音楽と現代音楽の出会い

こんばんは。ゆりおです。

定期演奏会の曲目には、北海道初演の曲も含まれています。それは…

Shadows Ablaze(シャドウズ アブレイズ) / Kathryn Salfelder

JWECC(※)2015委嘱作品であり、4月12日に世界初演されています。
※日本管楽合奏指揮者会議(Japan Wind Ensemble Conductors Conference)

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この曲全体のモチーフとして使用されているのは、"D'un autre amer"という曲です。

1400年代にフランスのヨハネス・オケゲムによって作曲されました。

フランスでは単声音楽(いわゆるグレゴリオ聖歌)の時代が長く続いていましたが、
13世紀に人声のみによる多声音楽が誕生しました。

オケゲムも多声ミサ曲の重要な作曲家の一人であり、宮廷風の愛をテーマにした曲を多く残しています。
"D'un autre amer"もその一つであり、
上の動画のように上声部のみが歌われることもあれば、三声で奏されることもあったようです。

"D'un autre amer"の歌詞を訳してみると、こんな感じです。

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もし他の人を愛するならば 私の気高い心は失われる
誰が考えるでしょう 私が彼から離れることを
何らかの理由で 私がこの誓いを破り
自らの名誉を傷つけることを

私は彼をこんなにも愛しているのだから
他の人を受け入れることなどできない

もし他の人を愛するならば 私の気高い心は失われる
誰が考えるでしょう 私が彼から離れることを

死 それは神によってもたらされる
生あるうちに他の人と出逢う その前に
誰が信じるでしょう 私がそれを許すなどと
私の誠実さが あまりにも深く穢されることを

もし他の人を愛するならば 私の気高い心は失われる
誰が考えるでしょう 私が彼から離れることを
何らかの理由で 私がこの誓いを破り
自らの名誉を傷つけることを

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女性が不滅の愛を宣言する歌…であると同時に、逆説的に移り気を歌っているとも考えられます。

さて、本題の"Shadows Ablaze"に戻りましょう。
上記のように古典音楽がこの曲全体を支配していますが、それだけではないのです。

  • 1400年代の宗教音楽的な響き
  • 21世紀や現代音楽を思わせる鋭い木管アンサンブル、ジャズの要素
  • さらに異なる世界に位置するフリューゲルホルンとユーフォニアムのソロ

これらが絡み合い、しかし融け合うことなく進行していきます。

古典音楽と現代音楽の出会いの瞬間。
お聴き逃しなく!